時は遡り、平成26年3月1日 石川県立輪島高等学校 第66回卒業証書授与式が挙行された。体育館は静けさの中に厳かな空気を生み出し、ピンと張った幔幕が緊張感をつくりあげている。この日は私にとって特別な日である。
平成22年4月1日 石川県立輪島高等学校で新規採用となり、翌年、11H の担任を受け持ち、その子どもたちを21H、31Hと持ち上がった。そう、その日はまさに、子どもたちの巣立ちの時であった。
「全日制! 総合学科! 1組!」私は卒業名簿を見ずに子どもたち一人ひとりの顔を見て呼名した。マイクを使わず、静かな体育館に子どもたちの呼名が響き渡るのを感じながら・・・そして、それに生徒も応えた。
「はい!!」 私との最後の真剣勝負に負けじと、体育館に響き渡る返事で全員が応えた。その返事に魂が震えたのを今でもはっきりと覚えている。
「校歌斉唱」 青雲に…流れるものをこらえて上を向いて歌った。私は初めて生徒の前で泣いた。これまでの思いが一気に込み上げてきた。退場の際、万感の思いで目に涙を浮かべる31Hの子どもたちと一緒に、保護者席に向かって挨拶をした。
「ありがとうございました!!!」その瞬間、泣きじゃくる担任と子どもたちに、緊張感に包まれていた会場から、一瞬にして陽がさしたように、温もりに包まれながら万雷の拍手が送られた。
総合学科第4期生 時には胸ぐらをつかみ合い、毎日が彼らとの真剣勝負だった。その子どもたちも今年で28歳となる。まさに日本の未来、社会の一翼を担う立場として日々精進しているに違いない。高校を卒業したその時から、これまで支えられてきた者が、自分の後を生きる者のために生きていくことになる。
そして、最後に私は彼等と一つのことを約束した。
「3月1日を31Hの日にしよう。1年に1度でいいから今日の日を思い出せ。その日まで、何があっても自分の持ち場で1人ひとりが31の灯をともせ。その一灯が、やがて万灯の灯となって、より良い社会を創っていく。一灯照隅・万灯照国。俺たちは1人じゃない」と。
輪島を愛し、輪島に育てられ、輪島とともに成長した7年間。今後ますますのご発展を祈念いたします。